スタート時に考えたいオウンドメディアに必要な役割とリソース

いざ「当社でもコンテンツマーケティングを進めよう、オウンドメディアを持とう」となったとして、どんなスキルをもった人員をどれくらい用意してチームを編成すべきでしょうか。

コンテンツマーケティングやオウンドメディア自体のパターンも様々ですが、ここでは記事による情報発信型のオウンドメディアを想定して整理します。

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  • ・オウンドメディアは組織的運営が不可欠
  • ・オウンドメディア運営に必要な役割
  • ・第一の壁、ライティングのリソース確保
  • ・ライティング以外のリソース・ノウハウの外注について

オウンドメディアは組織的運営が不可欠

記事型のオウンドメディアにおける施策は、究極的には継続的にユーザーの求める記事を書き続けられることを実現する…ということに尽きます。 ただ、一度でもオウンドメディアやコンテンツマーケティングに関わったことがある方なら、ライターだけ用意して運営することがいかに無謀であるかはご理解いただけるでしょう。

もちろん、単に記事を書くということであればライターが一人いれば十分ですが、それによって企業活動として利益という成果に繋げるというオウンドメディアの役割を全うできることは極めて稀です。

記事のライティングの前には企画、さらにその上には事業としてのオウンドメディアの方向付けを考える必要があります。
また記事を執筆した後にも事実確認のための校閲、誤字や表現を正すための文字校正が必要です。そのうえで画像や写真の作成・調達をしたあとで入稿(コーディング)され、ようやく公開されます。

これらは決して“良いコンテンツを作るための工程”ではなく“最低限オウンドメディアを運営するための工程”です。
オウンドメディアとはこうした様々な工程をパラレルに進行し続ける必要があるものだ、という認識を欠いたまま勢いでスタートさせてしまうと、業務量に担当者が潰されたり、戦略的なコンテンツ制作に達することなく「成果が出ない」などの理由で閉鎖に追い込まれたり…。十中八九、こういった不幸な結末を迎えます。
「オウンドメディアは組織活動である」と認識することが、オウンドメディア施策の第一歩です。

オウンドメディア運営に必要な役割

整理すると、大きく以下のような役割に分かれます。

実際には異なる名称で組織化されていたり、より細分化されていたりすることもありますが大まかな役割として捉えてください。

統括

ディレクター / 編集長
オウンドメディア全体の方向づけを行う。予算や成果の責任を持つ。
コンテンツ方針の他、SEOやSNS施策、CVR改善など各種施策の立案を含む。

制作

プランナー / 編集者
記事の企画、テーマ立案や記事品質の担保。校閲や校正を兼任することも。
ディレクター同様、SEOの知識を求められることが多い。
ライター/ 記者
記事の執筆の他、調査・取材を含む場合もある。
入稿担当を置かない場合は入稿作業も行う。
デザイナー
挿入画像の制作や、撮影した写真の加工、オウンドメディア上の各種素材制作など。
簡易な画像のみであれば記事制作時点でライターが役割を兼ねることも。
CMS入稿担当
完成した原稿・画像素材をCMS上にアップロードする。
多少htmlやCSSの知識が求められる場合も。

サイト管理

エンジニア(主にフロントサイド)
Webサイトとしてのオウンドメディアの保守・運用。

計測・分析

アナリスト / 分析担当
アクセス解析やレポーティングを担当。
専任で置かない場合はプランナー・ディレクターなどが兼任。

営業

営業担当
オウンドメディア単独で広告収益やタイアップ記事による収益化を考える場合に置く。
恒常的に営業活動が発生しない場合はディレクターが兼任することが多い。

これらに加えて、必要に応じてカメラマン、イベント運営担当といった具合に、様々な役割が求められます。もちろん、それぞれの役割に一人ずつとは限らないので、すべてを専任で賄おうとすると非常に多くの人員を要することになります。余程潤沢なリソースを使えるような場合でない限り、スタート時には2、3名程度の確保が現実的でしょう。

従って基本的には一人が複数の役割を担うことが求められます。どのような分担にするかは各人のスキル次第ですが、制作本数に責任を負うプランナー役に負担が集中しがちな点は注意が必要です。 また一人何役もこなす前提であれば、自分の役割の周辺知識の獲得に抵抗がなく、自身で手を動かすことができる人材でチームを組むことが望ましいです。

第一の壁、ライティングのリソース確保

既に様々な場所で議論されていますが、オウンドメディア運営において記事制作のリソースが大きな壁になります。
記事制作リソースの確保には大きく分けて

  • ① 内製
  • ② 外注

の2つの選択肢があり、それぞれ更に細分化されます。

個別に見ていきましょう。

① 内製の場合

1)すべてオウンドメディア運営チームで制作

前提として、ライティングに関してはディレクターやプランナーが兼任するのは望ましく有りません。ライティングそのものに費やす作業リソースが大きいことに加え、記事品質を判断すべきプランナー自身が執筆することで品質への客観的な判断が難しくなります。

業界に関する専門知識を要する場合などを除き、基本的にはライターはプランナーと別立てするべきです。

つまりオウンドメディア専属ライターとして人員を新規でアサインする必要があります。今までコンテンツマーケティングを実施していなかった企業の場合は、ライターの採用から業界知識の教育まで必要になるので、初期のコストが大きく、スタート直後から主力にするのはよほど慣れた人材を確保できない限り難しいです。

ただ、実現すれば安定した品質の記事が制作し続けられる点は長所です。潤沢な予算が確保できていて、オウンドメディアの準備期間にライター教育の経験があるディレクター・プランナーの参加が確定している場合には検討の余地があります。

2)自社内の持ち回りで制作

社内の協力を仰ぎ、持ち回りで記事を執筆してもらいます。自社とはいえ無関係な部署にオウンドメディア運営にリソースを提供してもらう都合、事前に依頼先事業部の責任者と交渉できるかどうかにかかっています。また仮に依頼できたとして、依頼先の本来の業務が逼迫してくると、記事執筆が後回しになったりキャンセルされたりすることは避けられません。また一般的な会社員はそこまで「原稿」を書くことに慣れていないことも多く、テーマだけ丸投げ…という形では思うような品質・体裁にならないことも多いです。

ただ記事の内容自体に目を向けると、BtoB企業のオウンドメディアのように専門性が高く、前提知識を要するコンテンツの制作が必要なケースでは、一番の専門家である自社内での持ち回りは有効です。

多くの本数を執筆することは難しくなりますが、記事の本数よりも深くて充実した内容の記事の質を求める際の選択肢と考えましょう。 もしオウンドメディア事業自体がトップダウンで進められている場合は実現可能性が十分にあるので、検討する価値はあります。

② 外注

3)記事制作会社に発注する

記事制作代行サービスを利用して記事を制作するパターンです。予算はかかるもののライティング作業自体をそのままアウトソースできるほか、オプションで景品表示法や薬機法のチェックまで対応してくれる業者もあるので、安定したスタートを考えるならば最も有望な選択肢です。

記事品質についてはサービス各社の得手不得手もあるので割愛しますが、共通して重要なのはオウンドメディアや記事の目的、コンセプト、ターゲットなどのすり合わせが非常に重要な点です。ここで発注先と方向性を揃えられないと、費やしたコストに対して期待する納品物は見込めません。また一般的に記事制作会社も納品を繰り返すうちに品質をブラッシュアップしていくものです。

ライティング自体のリソースはすべて任せられるとはいえ、コミュニケーション・ディレクション面に割く労力が発生することを認識する必要があります。

4)クラウドソーシングの利用

一時期ほどの勢いではないものの、現在でもクラウドソーシングを利用した記事制作は活発です。クラウドソーシングに発注する場合は 3)記事制作会社に発注する の場合と異なり、ライター契約を直接実施する必要があるため、管理・コミュニケーションに伴うリソースは非常に大きくなります。また記事制作会社と異なり、納品される記事品質にもばらつきがあります。

一方でクラウドワーカーの中でオウンドメディアのテーマに明るく、ライティング能力の高い方に出会える可能性もあります。こういった方を見つけた場合、なるべく好条件でお仕事を依頼して長くお付き合いするように努めましょう。

クラウドソーシングを利用する場合は記事制作会社を通さない分コストを抑えられるので、発注の経験があるプランナーが確保できる場合には検討の余地があります。

その他にも、直接ライターを探し出し契約を結ぶ方法などがありますが、いずれの方法も一長一短です。予算とスキル、記事品質と記事本数にあわせて選択また組み合わることが必要です。例えば自社のマインドやノウハウといった自社の人間にしか書けない専門性の高い記事は内製、用語解説や仕組みなどを説明する記事は外注、といった使い分けです。

ライティング以外のリソース・ノウハウの外注について

コンテンツマーケティングは専門的な知識を幅広く求められる、いわばwebマーケティングの総合格闘技です。
基本的には戦略立案・分析の役割は自社内で持つことでスピード感のある運営を実現するものですが、自社内だけですべてのスキルを確保できないケースも往々にして発生します。 また自社内だけではいずれ視野が狭くなり、行き詰まることもありえます。

そうした場合には専門のコンサルティング会社やオウンドメディア運営支援会社への相談も検討すべきです。こうした支援会社では、戦略立案やアクセス解析・分析、記事制作まで発注するならライティングのディレクション代行など多岐にわたるサポートが期待できます。自社内でコアの部分は担いつつ、不足するスキルやノウハウは専門家の助力を得るのが理想的です。

では自社内ではどういったスキルを確保するか、という選択は状況次第ですが、アクセス解析・分析に関わるスキルをまずは優先することをおすすめします。分析はオウンドメディア運営のための予算確保にも直結するからです。

一般にオウンドメディアが成果を出し始めるのにはうまくいって半年以上、長ければ年単位の時間を要します。それまでに予算を確保し続けるためには、現状の数字とボトルネックになっているであろう要因を把握し、社内に報告する必要があります。

また現場で運用・制作している各担当者も、開始直後は先のみえない状況に耐え続ける必要があるので、現状が把握できないことは組織としてのモチベーションにも関わるため内部崩壊を防ぐ意味でもアクセス解析・分析は重要です。

アクセス解析やユーザー行動の解析、あるいは流入の分析は、GoogleAnalyticsに代表される各種ツールの利用が前提になります。分析に関するノウハウが全くない組織であれば、まずはこういったツールに慣れるところから少しずつ習熟していくと良いでしょう。