混同しやすいコンテンツマーケティングとSEOは区別と両立が成功への第一歩

コンテンツマーケティングとSEOはしばしば混同されることがあります。特にWeb施策においては、いずれも実際に手を動かす際には「良いコンテンツを作る」という点に収斂するので尚更です。

コンテンツマーケティングとSEOは本来言及される文脈が異なるものですが、重複し相互に干渉する部分があるのも事実です。この両者の関係について整理しました。

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『コンテンツマーケティング』と『SEO』それぞれが指すもの

『コンテンツマーケティング』は、本来は広く「有益なコンテンツを提供することで顧客との関係を作り収益につなげること」を指しています。

Contents Marketing Instituteには以下のように定義されています。

“Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action.”

コンテンツマーケティングは顧客にとって価値のある、適切で一貫したコンテンツの制作と提供に重点を置き、明確に定義された顧客を惹きつけ、維持するための戦略的マーケティングアプローチであり、最終的には利益に結びつく顧客のアクションを促すものである。

引用:What Is Content Marketing?

ここでは検索エンジン、ひいてはWebに限ったコンテンツを指してはいません。広く企業から発信されるあらゆる情報を「コンテンツ」としており、例えば広告や動画、イベントなやホワイトペーパーすべてを指しています。

対して『SEO』は「検索エンジンからの流入を最大化すること」です。 SEOを始めとしたWebマーケティング関連ツールを提供しているアメリカの『MOZ』では以下のように定義しています。

SEO stands for Search Engine Optimization, which is the practice of increasing the quantity and quality of traffic to your website through organic search engine results.

SEOとは検索エンジン最適化の略語であり、検索エンジンからのオーガニックトラフィックの質と量を向上させる手段です。

引用:What is SEO?

SEOは検索エンジンという流入チャネルにおいて、どれだけ良質かつ大量の自然検索によるトラフィックを増加させるかに焦点が置かれています。
より具体的に「検索順位を上げること」という言い方をされることもありますが、上位表示はあくまでもトラフィックの質と量を向上させるためのひとつの要因であり、それ自体は本質的な目的では有りません(ブランディングの観点から最上位表示が目的になりうることはあります)。

Web上に限定しない文脈を考えたとき、『コンテンツマーケティング』それ自体は全体論的なマーケティングの観念、『SEO』はよりテクニカルな手法を指すと考えても良いかもしれません。

Webの文脈でコンテンツマーケティングとSEOが混同された経緯

一方で、Webマーケティングの文脈から両者を扱う場合にはしばしば混同されることがあります。 日本国内ではコンテンツマーケティングに先立ってSEOが普及していましたことで、コンテンツマーケティングが認知されはじめてきた頃にSEOにおけるコンテンツ戦略と合流してしまったからです。 (もちろん当時から両者を明確に区別していた方も少なくありません)

SEOの時間軸では、2011年頃からいわゆる「ブラックハットSEO」、特にガイドライン違反のリンクビルディングに対するペナルティが確認されるようになり、各種アップデートを経て「外部リンク依存ではなく、コンテンツ制作による上位表示こそがSEOである」という風潮が生まれました(結果として低品質コンテンツの量産による検索体験の低下が問題視されたりもしました)。

それがちょうど当時広まりつつあったコンテンツマーケティングの表面的な理解と合わさり、「SEO = コンテンツマーケティングとはテキストコンテンツによって検索流入を増加させることだ」という誤解を生むことに繋がりました。

もちろん、本来はWeb上であっても動画やウェビナー、広告、SNSでのコミュニケーションなど多様な形式のコンテンツがあることには変わりはありません。従って「コンテンツマーケティグにおいてオウンドメディアのトラフィック増加にフォーカスした戦略(以降「オウンドメディア型」)の場合はSEOと重なる」と捉えるのが妥当でしょう。

オウンドメディア型コンテンツマーケティングとSEOが重なる点

オウンドメディア型コンテンツマーケティングの場合、そのフォーマットとして最もメジャーなものがテキストコンテンツである「記事」です。 近年では動画も普及していますが、プラットフォームとしてはオウンドメディアよりまだまだ動画サイトやSNSが主戦場です。

前述のように、コンテンツマーケティングにおいて重要なことは「顧客にとって有用なコンテンツ(情報)の提供」です。 一方でSEOの観点では、誤解を恐れずに言えば「Googleは検索ユーザーにとって有用な情報を提供しているページを上位に表示する」としています。

”その一環として、今週、ウェブサイトの品質の評価方法に改善を加えました。今回のアップデートにより、ユーザーに有用で信頼できる情報を提供することよりも、検索結果のより上位に自ページを表示させることに主眼を置く、品質の低いサイトの順位が下がります。その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります。”

引用:日本語検索の品質向上にむけて

つまり、有用なコンテンツを作ることはコンテンツマーケティングの目的とSEOにおける検索エンジンの評価獲得を両立させます。この点でオウンドメディア型コンテンツマーケティングとSEOは相互に補完しあう関係が成り立っていると言っても過言ではないでしょう。

このようにオウンドメディア型コンテンツマーケティングとSEOはコンテンツ制作という大きな領域で重なっていますが、そこだけに手をかければ成果が出るというものでもありません。コンテンツマーケティングとSEOそれぞれにしかできない役割があります。

コンテンツマーケティングとSEOが両立すると成果につながる

SEO側では、コンテンツのみが良質であってもランキングの上昇・トラフィックの最大化は難しいかもしれません。コンテンツやディレクトリの構成、場合によっては転送やURLの正規化、多言語対応や構造化マークアップなどテクニカルな要素も重要だからです。特に大規模サイトほど技術的要素の比重が大きくなります。

またコンテンツ側では、検索エンジンから訪問してきたユーザーの信頼を得て、よりファネルやカスタマージャーニーの次の段階へ導く一連のコンテンツ群としての役割があります。

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よりファネルの上部(認知)に近い層のユーザーから自社への信頼を得るためには、コンテンツへの複数回の接触や滞在時間の増加などで示される、オウンドメディアとの関わりの強さが重要になります。 ファネルの段階ごとに適切なコンテンツを作成したうえで「関連コンテンツ」や「人気コンテンツリスト」「同一カテゴリーの記事」のような導線を設計し、それぞれのコンテンツを一連のコンテンツ体験として提供することで信頼の獲得が見込みやすくなります。
ここには「youtubeの埋め込み動画」や「ダウンロードできる資料」といった、それ単体では検索エンジンに評価されづらいコンテンツも含まれるでしょう。

まとめ

オウンドメディア型のコンテンツマーケティングとSEOは、それぞれ単体では成果に繋がりづらく、両方が重なる領域であるコンテンツ制作と、それぞれ独自の領域である技術的側面・コンテンツ体験設計を両立してはじめて成功に近づきます。

現在ではSNSや動画共有サイト、ニュース配信サイトやアプリなどトラフィックを獲得できるチャネルは多様化していますが、依然として検索エンジンは主要な流入経路です。オウンドメディア型コンテンツマーケティングとSEOの重なる部分・重ならない部分を適切に把握し対策することが、スムーズな戦略立案とPDCAサイクルの循環に繋がります。