少数チームのオウンドメディア運営における設計の勘所

ごく少数の人員だけでコンテンツマーケティング、特にオウンドメディア運営を実践しようとする場合、常にリソース不足に悩まされます。コンテンツを発信する経験のない企業の場合、多くて2,3名の担当者が他業務と兼務で回さざるを得ないケースが大半です。

コンテンツマーケティングについて詳しく解説された記事や書籍は既に世の中に多く存在しますが、一方であまりに壮大すぎて自社の規模では適用しづらい…というのが実情です。 コンテンツマーケティングにはとにかく手がかかるので、特に少人数で実践する場合には取捨選択が非常に重要になります。そんな「少数チーム」でコンテンツマーケティング、特にオウンドメディアでの記事発信を中心とした施策を取っている方に向け、実際に運用しやすい設計を考えていきます。

関連記事

スタート時に考えたいオウンドメディアに必要な役割とリソース 《5ステップで作る》はじめてのカスタマージャーニー 『ZMOT』コンテンツマーケティングに携わるなら知っておきたい消費者行動 混同しやすいコンテンツマーケティングとSEOは区別と両立が成功への第一歩

オウンドメディアの設計は欲張らない

既にオウンドメディアを運営している場合でも「このままの方向性で大丈夫なのだろうか」と現状の設計に疑問を持つことがあるものです。書籍などを参考に今の方向性と事業上あるべき理想を書き出し、オウンドメディアのテーマやターゲットのペルソナを再設計しカスタマージャーニーまで整理しコンテンツマップやエディトリアルカレンダーも…。
そうやって作り上げた資料を改めてみたときに、今あるリソースとイメージする理想像とのギャップの大きさに愕然とした経験がある担当者の方は少なくないのではないでしょうか。

どのようなオウンドメディアであるべきかは事業課題から順に落とし込んでいくべきですが、詳細に設計しすぎても実際的ではありません。 ここでの計画は常にコンテンツ作りの際に振り返る指針になるものなので、リソースの無い場合に厳密にし過ぎることで対応できるボリュームを超えてしまい、かえってスピード感を落としてしまいます。 特にオウンドメディア運営の知見に乏しいチームの場合は根拠にすべきデータに乏しいことも大いに有り得るので、精緻に検討しても机上論に陥りがちです。

まずは、以下の5段階に絞って設計してみることをおすすめします。

特に、最後の『オウンドメディアのコンセプト言語化』は重要です。最もリソースを割かれる記事制作時(特に外注している場合)に関係者間での理解をブレさせないためにはここだけはしっかりと固めておきたいです。

一方でペルソナ設定については、初期の段階では無理に練ろうとしなくてもできる範囲で構いません。というのも本来ペルソナ設計は「ある程度のアクセスデータや顧客データがある場合に、データに基づきリバースして設計する」ものだからです。もしこれから新規で立ち上げるオウンドメディアで伝えたい相手が全く未開のターゲットだとしたら、こういった情報に乏しいのは必然です。ここでつまずいて先に進めないよりは、大雑把なところで見切りをつけてしまう方が得策です。まずはコンテンツ制作までスムーズに進行させ、その結果のアクセス解析なり購買情報なりを溜めてから練り直しても、よほど当初の想定が現実とかけ離れていない限り間に合います。

またこれら5段階のそれぞれの段階でも、欲張って複数の目標を建てるのは避けるべきです。例えば極端な例ですが、事業課題に

  • ・自社事業の認知度自体が低い
  • ・購入件数を増やしたい
  • ・リピート率を上げたい

が挙がったとして、全てをカバーしようとすればそれだけのコンテンツを用意するリソース(要するに相応の記事本数)を求められます。限られたリソースで局所的なパフォーマンスを上げるために選択と集中が必要なのはコンテンツマーケティングでも同じですね。

ターゲット設計と関連し、マーケティングファネルに置き換えた時にどの層を狙うかという視点でも絞り込みをすべきです。

オウンドメディアは成果が見えるまで時間がかかるので、その運営では周囲の理解を得ることが肝心です。特にBtoB向けの場合はセールス部隊との連携も重要になるので、営業的な観点からオウンドメディアの役割を示す意味でも多面的に定義しておきたいです。

コンテンツ制作ではまず数を打つ

コンテンツマーケティングにおいて記事品質は最重要である…これは事実です。しかしながら、何を持って「高品質な記事」とするかを決めるのはユーザーです。どれだけ取材して綿密な調査を行い、プロのカメラマンが撮影した写真をふんだんに使った記事を公開したとしても、ユーザーの反響として数字に現れなければ主観的な「高品質」の域を出ません。

ではユーザーが判断する「高品質な記事」をどうすれば制作できるか、というと、実践で判断するしかありません。公開した複数の記事のうちどのような方向性のものに反響が集まるか、試行錯誤を繰り返す必要があります。

SEOの観点からも本来は記事の品質を重視すべきですが、そのための判断材料になるデータのボリュームを確保するためには、主観的な記事品質を追求するより、まずは数十記事を公開してみて、その反響からユーザーの認識する記事品質の良し悪しを判断するほうがスピーディです。決して記事の質に拘らないというわけではなく、そこだけに注力するよりはまず世の中の反応を見る、ということです。

また迅速な試行錯誤を繰り返すことで、結果として社内にも施策の成果を報告しやすくなります。コンテンツマーケティングではとにかく事業上の成果が体感できるまで時間がかかるので、施策と数字の変化の因果関係を報告できることは理解を得る上でも重要です。

どれだけの記事本数が妥当かはオウンドメディア次第ですが、特に検索流入の面では、いわゆる『2:8の法則』を基準に考えるのも手段です。例えば100本の記事のうちまともに読まれる記事が20本あるとすれば、ある程度ユーザーに求められる記事の目星がつけられるでしょう。

まとめ

コンテンツマーケティングという考え方が浸透してから、既に多くのコンテンツ、つまり記事がウェブ上には溢れています。コンテンツマーケティングそれ自体は様々な領域をカバーできるポテンシャルのあるものですが、全てに対応しようと薄く広く手をのばすと、それら数多く存在する記事に勝ることは至難です。
社内で理解を得るだけの成果を出せなければオウンドメディアそれ自体の継続も難しくなるかもしれません。まずは今できることとできないことを選択することが、長期的な成功にとって大切だと考えるべきでしょう。