《5ステップで作る》コンテンツマーケティング・はじめてのカスタマージャーニー

コンテンツマーケティング施策を戦略的に運用するにあたって、適切なコンテンツ設計や顧客との接点が持てているかを判断するためにカスタマージャーニーマップが有効です。

精緻な制作に非常に手間がかかりますが、そもそもカスタマージャーニーはコンテンツ運用にあわせてブラッシュアップしていくもの。最初から完璧なものを作ろうとせずに、まずは簡易なものからスタートしていくほうがスムーズな運用ができます。 今回は『はじめて作るカスタマージャーニーマップ』と題して、なるべく簡易に作成できる手順を整理しました。

※なおカスタマージャーニーは本来、顧客のペルソナを設定してから作るのが適切です。今回はペルソナ設計については割愛しましたが、もし社内で既に固まっているペルソナがあれば、合わせて検討するようにしてください。

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1. 想定する購買プロセスを図示する

まずは自社のコンテンツマーケティングにおいて想定している顧客の『購買プロセス』を整理します。

『購買プロセス』は顧客が購買の意思決定に至るまでの一連の心理・思考をモデル化したものです。 代表的なのはAIDMAモデルやAISASモデルですが、これらは広告やマスプロモーションを前提として購買モデルで、その背景には積極的に顧客を誘導する、いわばセールス的な思考があります。

コンテンツマーケティングにおいては重要となるのは「有益で説得力のあるコンテンツによって顧客とのエンゲージメントを獲得すること(参考: CONTENT MARKETING INSTITUTE )」です。従って顧客主導の観点から購買プロセスを検討する必要があることは念頭に置く必要があります。 こういった顧客とのコミュニケーションを考慮し、AISEASを始めとした新しい購買行動を反映したモデルも考案されています。

マス中心だった時代と異なり、現在では単一の購買プロセスに依存することは難しいのが実情なので、実際に自社の購買プロセスを検討する際にはこれらをアレンジして適用するのが妥当でしょう。

今回は自社ブログのようなオウンドメディア施策を中心としたリード獲得による購買・契約をイメージし、以下のようなプロセスを想定しました。

購買プロセス例

コンテンツ発信による「好感 / 信頼」という心象の変化を重要視し、意図的にプロセス化しています。

2.各プロセスでの接触チャネルを設定する

購買プロセスを明らかにしたら、次にそれぞれのプロセスにいる顧客と接触するチャネルを記載します。例えば「認知」の段階では、「検索エンジン」「SNS」のように、顧客が自社の発信する情報とどういったシーンで接触するかを、可能な限り既にあるデータに基づいて検討します。

例えば広告と自社サイトへのアクセスデータの相関や、サーチコンソールで見られる検索クエリ、あるいは直接顧客からヒアリングした情報など、顧客の意図と行動の関係を示すデータであればあらゆる情報が役に立ちます。

商材によっては「家族との会話」のようなシーンも接触チャネルに含まれるかもしれません。 こういった発見しづらいチャネルの存在は既存顧客へのヒアリングによってはじめて確認できるものです。初回のカスタマージャーニーマップ作成では見えていない可能性があるので、将来的にブラッシュアップしていく際に追加するつもりで留意しておきましょう。

前述の購買プロセス例では、以下のような接触チャネルを設定しました。

検索エンジンとSNSを主な経路として「認知」し、自社ブログで「好感/信頼」を得て製品への「興味」を持ち、サービスサイトや無料セミナーを通じて「比較検討」し購買「行動」 を取るに至ると想定。また購買後もメルマガや会員限定セミナーなどで自社製品・サービスを「継続」するモチベーション作りをします。

3.各段階での顧客の思考を想像する

それぞれのプロセスに居る顧客が想定したチャネルと接するにあたって、何を考えているかをイメージします。ここが最も顧客理解を求められるところです。顧客の思考は商材ごとに異なるので、基本的にはフリーフォーマットで記入していくことになります。 収集できている情報を踏まえて、想像力をフル活用する必要があるので、複数人で議論しながら検討するのが良いでしょう。

もし取っ掛かりがない場合には、まずは「不安」「疑問」「信頼」「好奇心」のような、感情の観点から検討してみると考えやすいです。

前述の例に顧客の思考を足してみました。

実際に商材に基づいて記載する場合はより具体的に記載しますが、思いつかなくても関係者間での目線をあわせる意味で、まずは記載してみてください。

4.顧客の思考を踏まえてアクションを設定する

それぞれのプロセスにおける顧客の思考を踏まえ、顧客がどのような行動を取るかを設定します。例えば「認知」の段階では「検索エンジンで◯◯について調べる」「雑誌の◯◯という記事を読む」といったように、どこで何をするのか具体的に記載します。

ここでは「こうあってほしい」という自社の願望にならないよう、あくまでも想定している顧客像が取るであろう自然な行動を記載していくことが大切です。

BtoBの場合には、社内でどの検討段階に進んでいるのかも含めて考えるべきなので、「社内の意思決定」のような個別の行を設けてもよいでしょう。

5.顧客の行動に合わせて提供すべきコンテンツを配置する

各プロセスでの顧客の思考・行動に対して、自社で発信すべき情報やコンテンツを配置していきます。ここでは現時点で発信できていない情報やコンテンツも含め、各チャネル内でどんなコンテンツが提供しうるか、“あるべき”を記載していって構いません。カスタマージャーニーマップにおいてはリーチできていないプロセス・不足しているコンテンツを洗い出すのも目的だからです。

これで最初のカスタマージャーニーマップが完成です。今までカスタマージャーニーマップを作成したことのない場合、まずはここまでの情報量を目指しましょう。

顧客ごとの購買プロセスが違いすぎたり、1回の購買行動が複雑すぎたりしてまとめづらい場合もあります。そのような場合は自社顧客内で特に多いパターンに絞る、売上上位のモデルを採用するなどの工夫が必要です。

カスタマージャーニーマップの作成は本来非常に大きな労力を要するものですが、そのぶん戦略的なコンテンツマーケティングにはとても有効なツールです。施策上のボトルネック発見という本来の役割の他、マーケティングを推進する部署以外との目線合わせや社内での問題共有にも活用できます。まずはシンプルなものから作成してみて、運用の中で情報を拡充しましょう。